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日本語 Top » 人材育成計画 » 共同研究プロジェクト

・グローバルCOE研究員を雇用し、事業統括班の指導の下に、フィールド言語学、コーパス言語学、言語情報学の各分野の教育研究プログラムに参加させます。

・グローバルCOE研究員と話し合いながら、グローバルCOEリサーチフェローとジュニアフェローが、グループによる共同研究プロジェクトの申請を行い、選考によりプロジェクトに経済面な支援を行います。

●コーパスにもとづく語彙論入門書の作成
●ロシア語の自然会話集
●話し言葉コーパス(フランス語)
●日本語学習者言語コーパス
●双方向学習者コーパス国際プロジェクト(ICCI: International Corpus of Crosslinguistic Interlanguage)

●コーパスにもとづく語彙論入門書の作成
  語彙論を教えるための大学生向けの入門書をつくることを目的とするプロジェクトです。
2010年度の参加者は、事業推進担当者(コーパス言語学班)の早津恵美子のほか、本学リサーチ・フェローの中山健一、茶谷恭代、および本学大学院博士後期課程(ジュニア・フェロー)の高秀辰、佐藤佑、福原聡美、高京美、タップホン・ナリン、ナオサラン・アーパーポーン、アクマタリエワ・ジャクシルク、金俸呈、辺純影、李丹、モンコイチャイ・アッカラチャイの13名です。 
  次の4つの課題をおこなっています。

1.初級日本語教科書の語彙調査 
『新装版 初級日本語』(東京外国語大学留学生日本語教育センター編著1994)で使用されている動詞について、実際の文例、表記、構文的性質、形態的性質などの動詞リストを作成し、それをもとに調査・分析を行うことを目標とします。2009年度には語彙論的な観点からの分析を終え『初級教科書の語彙分析―動詞編(1)語彙的な性質―』として報告書を刊行しました。現在は、続編として、文法的な性質ついての報告書を作成中であり、2010年度中に報告書を刊行する予定です。 2010年度の作業は、上の参加者のうち、アクマタリエワ、金、辺、李が中心となり中山が部分的に補佐して行っています。

2.語彙教育関係文献の収集 
日本語教育における語彙教育のあり方について論じている、福原が中心になって先行文献を収集し、2009年度に文献リストをほぼ完成しました。現在は補充中です。なお、調査報告として、早津と福原の共著で、「日本語語彙教育についての研究の動向-文献調査から見えてくるもの―」(『コーパスに基づく言語学教育研究報告』No.5)をまとめました。

3.語彙論入門書のための練習問題の作成
既存の語彙論入門書の検討をもとに、大学生のためのよりよい入門書(練習問題、資料、文献リストなどの充実したもの)を作ることを目指して定期的に検討会を行っています。早津および、中山、茶谷、佐藤、福原が中心になり、モンコイチャイと荒井啓宏(本学博士前期課程)が補佐して執筆を進めており、2010年度中に試案をまとめる予定です。

4.『太陽コーパス』を使った語彙・文法研究のためのガイドブックの作成 
『太陽コーパス』は、近代日本語の資料として貴重なものであるが、本学の学生には必ずしもなじみやすいものではなく、これまであまり利用されていません。そこで、本学学生のためのガイドブックの作成を計画しました。概説篇(『太陽コーパス』の概説)と実践篇(検索方法の実際を12の単語等について説明)および資料篇からなるガイドブックを本年度中にまとめる予定です。上の参加者のうち12名が加わっています。

●ロシア語の自然会話集 
  研究の主目的はロシア語話し言葉の「自然」会話コーパス構築と様々な言語分析(音声的、形態論的、統語論的、意味論的、語用論的)のためのデータを収集することです。
  本学からの参加者は恩田義徳 (博士後期課程、ジュニアフェロー)、大谷多摩貴(博士後期課程)、佐藤修(博士後期課程)で、本学教授中澤英彦の指導のもと、調査は主に彼らが行いました。共同研究機関はモスクワ大学で、アドバイザーとしてV. V. クラスヌイフ教授(モスクワ大学) 滝川ガリーナ(東京外国語大学、2008年当時)を迎え、インフォーマントは大学生や大学関係者(大学教員他)および一般市民です。 場所は宿泊施設、個人住宅などです。 対話タイプは一般的なテーマ(日本への留学、休暇のすごし方、旅行など)に関する男女の対話です。 http://cblle.tufs.ac.jp/multilingual_corpus/ru/index.html?contents_xml=top&menulang=ja

●話し言葉コーパス(フランス語) 
  本学のフェローからは中田 俊介(博士後期課程、ジュニア・フェロー)、杉山 香織(博士後期課程、ジュニア・フェロー)、松澤 水戸(博士後期課程、ジュニア・フェロー)、近藤 野里(博士後期課程、ジュニア・フェロー)、古賀 健太郎(博士前期課程)が参加し、現地録音、タグ付け等を行いました。他にもクリストフ・べンズィトゥン(ナンシー大学准教授)、秋廣 尚恵(エックス・マルセイユ大学講師)、フランソワーズ・ロラン(パリ13大学)が録音に協力しました。研究責任者は佐野敦至(福島大学教授)、川口裕司(東京外国語大学教授)、アカデミック・アドバイザーとして アンドレ・ヴァリ(エックス・マルセイユ大学教授)、ジョゼ・ドゥロフ(エックス・マルセイユ大学教授)、クレール=ブランシュ・バンヴニスト(エックス・マルセイユ大学名誉教授 故人)でした。インフォーマントはエックス・マルセイユ大学の学生や大学教員等、パリ13大学生です。
  この話し言葉フランス語コーパスは以下の2つから構成されており、1つはエックス・マルセイユ第1大学と協働して2005年7月に録音したものです。21個の対話は、総時間約7時間で10万語を超えています。対話の内容は大学の業務、家族の近況、寸劇など多種多様です。2つ目はパリ第13大学の研究者と協働して2006年2月~10月にかけて録音された7つの対話で、総時間は約8時間半で10万語を超えています。内容は主に音楽や文化についての会話です。さらに2010年度にも20時間を超える録音を行い、現在、文字化と校正を行っています。
http://cblle.tufs.ac.jp/tag/fr/index.php?menulang=ja

本コーパスを利用した院生の研究には以下のものがあります。
杉山香織、「フランス語学習者スピーキングコーパスの構築とその分析―フィラーと中性代名詞を中心にー」、『コーパスに基づく言語学教育研究拠点研究報告集 4』、グローバルCOEプログラム「コーパスに基づく言語額教育研究拠点」、東京外国語大学大学院地域文化研究科、2010、 313-327.
近藤 野里、「フランス語話し言葉におけるリエゾン ―Aix-en-Provence コーパスを用いた統語・音韻分析―」、東京外国語大学修士論文、2010.
小川 敬洋、「コーパスに基づいたフランス語における条件法の婉曲表現」、東京外国語大学修士論文、2007.

●日本語学習者言語コーパス 
  日本及び海外(漢字圏・非漢字圏)の教育現場における日本語学習者言語データを収集し、コーパス化します。これまでのところ、①e-ラーニングシステムを活用した、日本及び海外(漢字圏)の大学生の作文コーパス作 成、②誤用コーパス作成を主眼とした、海外(非漢字圏)の大学生の作文コーパス作成、を実施しています。
  E-ラーニングを活用した日本語学習者コーパス作成の参加者は、鈴木綾乃(博士後期課程、ジュニアフェロー、2010 GCOE研究員)、楊 嘉貞(博士後期課程、ジュニアフェロー)、井之川睦美(博士後期課程、ジュニアフェロー)、鳥居彩(博士前期課程)、学内協力者は林俊成(外国語学部准教授)、岡田昭人(外国語学部准教授)、データ提供協力者は彭春陽(台湾 淡江大学)となっています。
  日本語学習者誤用コーパス作成の参加者はテレンス シャア(博士後期課程、ジュニア・フェロー)、蔡松益(博士後期課程、ジュニアフェロー)、福田翔(博士後期課程、ジュニアフェロー)、コベルニック・ナディア(博士後期課程、ジュニア・フェロー)、学内協力者は望月 圭子(外国語学部教授)、データ提供協力者は森本一樹(英国 リーズ大学)です。
  進捗状況として、E-ラーニングを活用した日本語学習者コーパス作成では、今年度は本学ISEPTUFS(国内)と台湾淡江大学(海外・漢字圏)の学生に対し、e-ラーニング教材上で一定期間ライティングタスク(固定タスクと観点 別タスク各8種類)を課し、作文を入力してもらうことでデータ収集を行いました。また、昨年度収集したデータをCDに収め、品詞タグのタグ付けを行いました。 日本語学習者誤用コーパス作成では、英国リーズ大学(海外・非漢字圏)の協力を得て、統一テーマによる作文を毎月提出してもらい、英語母語話者の学習者言語データの収集を行いました。 また、このプロジェクトを通して、大学院生に国内外の言語教育現場での実践的教育実習と、言語データを収集する臨地研究の機会をそれぞれ提供しました。
http://cblle.tufs.ac.jp/llc/ja/index.php?menulang=ja

●双方向学習者コーパス国際プロジェクト(ICCI: International Corpus of Crosslinguistic Interlanguage)
  金田拓(博士後期課程、ジュニアフェロー)、本田ゆかり(博士後期課程、ジュニアフェロー)、野村真理子(博士後期課程、ジュニアフェロー)、内田富男(博士後期課程)、その他修士課程の院生もチームになってプロジェクトを運営しています。彼らは主に下記の世界7地域の学習者コーパス研究者と連絡をとりながら、小中高レベルの自由英作文データ採取を行っています。その学習データ管理および書き起こし作業を、学部生のアルバイトを統括して行っており、それによりデータ収集方法やコーパス整備の基礎を学んでいます。
  プロジェクトは、学内協力者として根岸雅史(本学教授)が参加しています。海外協力者として、オーストリア:トム・ランキン(ウィーン経済・経営大学)、バーバラ・シフトナー(ウィーン大学)、香港:デーヴィッド・リー(香港城市大学)、イスラエル:タマー・アヴィアッド(ハイファ大学)、ポーランド:アニェスカ・レンコ・シマンスカ(ワルシャワ大学)、スペイン:パスクヮル・ペレズ・パラデス(ムルシア大学)とマリア・ベレン・ディアズ・ベドマー(ハエン大学)、台湾:オースティナ・シーとメイ・マー (財団法人語言訓練測験中心)、中国:刘永兵(东北师范大学)にお願いしています。コーパス・エンジニアとして、シンガポール:ホアチン・ホン(国立教育研究所)といった国際的な学習者コーパス研究グループを組織しています。
  ICCIの主目的は、まず第1段階として、初級・中級英語学習者の自由英作文コーパスの構築と分析を行います。さらに、協力国の言語を外国語として学ぶ外語大生のデータを代わりに提供する「双方向型」のプロジェクトを第2段階として目指しております。投野がすでに公開している日本人中高生の英語学習者コーパス JEFLL Corpus と比較可能な初級・中級英語学習者のコーパス・データを目下世界7か所(中国、香港、台湾、オーストリア、イスラエル、ポーランド、スペイン)で国際比較が可能な学習者コーパスを構築中です。その数は、最終年度には参加学生の数がのべ7000人、データはおおよそJEFLL Corpus を含めると150万語規模になる予想です。
  現在、専用の web コーパス検索サイトを準備し、デモ版が公開されています。さらに、全データを XML 化して、Xaira という汎用検索ツールで複雑な検索を可能にしたヴァージョン、学習者属性を複合的に組み合わせて検索を可能にした web 検索ヴァージョンを作成し、内部でのデータ分析を終えた後、最終年度には一般公開する予定です。